春陽さんは、きぬゑさんに爽やかスマイルをしてみせる。


そのやり取りを見て、思わず「…嘘つけ!」と口を突いて出てきそうになった。


「それじゃあ、桃ちゃん。僕はそろそろ戻るね」

「は…はいっ。おやすみなさい」


春陽さんは、手をヒラヒラと振って出て行った。



静まり返った部屋。


ついさっきのことが、まるで夢みたい。

春陽さんじゃないだれかが春陽さんの体を乗っ取って、悪さをしようとしたのかと思うほど、一瞬雰囲気が変わった。