「どういうことだ…。」
「私がカンナちゃんを呼び出したの。昨日の夜の十二時くらいだったかな。」
「なんでそんな時間に。」
つばきが人目を避ける様に歩き出した。人集りを掻き分けて、船着場の前の雑木林を抜けて、グラウンドの方へ入っていく。
夏祭りの時と、反対だと思った。あの日はグラウンドの方に人が集まっていて、今は海の方に人集りができている。この町にもこんなに人が暮らしていたんだと、あの日と同じことを思った。
なんて皮肉なんだろう。夏祭りも「事件」も同じ。非現実的なことは、他人にとっては全てが「楽しいこと」なのかもしれない。
不思議なほど、グラウンドには俺とつばき以外、誰も居なかった。いつもはジョギングをしたり散歩をしている人や、ゲートボールをしている老人会の人達が数人は居るのに。
つばきが振り向いて、俺を見た。何を考えている表情か分からない。
「昨日、二人よりも先に帰ったじゃない?その後で考えてたの。カンナちゃんに話さなきゃいけないことがあるって。カンナちゃんだけに、この夏が終わってしまう前に。」
「話したいこと?」
「そう。とーか君には…ごめんね。聞かれたくなかったから、おうちの人達も寝ちゃった頃に、誰にも言わないで一人で来てって、防波堤に呼び出したの。」
「何でそんな危ない場所に…。お前は昨日だって…!」
つばきが俺の話を遮る様に、わざとらしく大きめの溜め息をついて、肩を上下させた。
「とーか君が知ったら今みたいに怒るじゃない。それに、おうちの人がそんな時間に家を出してくれるとも思えない。口止めしてないと、とーか君の耳にも入るって思ったし。誰にも気づかれないでカンナちゃんと二人っきりで会えるなんて、とーか君が嫌ってるこんな田舎町の、そんな時間の、暗い防波堤くらいしか無いんだよ!」
ヒステリーに感じる声でつばきが声を荒げたかと思うと、スッと声のトーンを落として「とーか君と違って。私にはそんな条件しか残されて無かった。」と言った。
「そんな場所や時間じゃなくても、昼間にお前の部屋とかでも良かったんじゃないのか!?」
「そんな結果論。今言ったってもう、しょうがないじゃない。嫉妬してるの?カンナちゃんの最期に二人っきりで会っていたのが自分じゃなくて私だったから。カンナちゃんの最期を知っているのが私だから。花火大会、二人だけで行かせてあげたじゃない。カンナちゃんとの夏休みの思い出を作りたいって願い、叶えてあげたでしょ?」
「お前…。」
「私がカンナちゃんを呼び出したの。昨日の夜の十二時くらいだったかな。」
「なんでそんな時間に。」
つばきが人目を避ける様に歩き出した。人集りを掻き分けて、船着場の前の雑木林を抜けて、グラウンドの方へ入っていく。
夏祭りの時と、反対だと思った。あの日はグラウンドの方に人が集まっていて、今は海の方に人集りができている。この町にもこんなに人が暮らしていたんだと、あの日と同じことを思った。
なんて皮肉なんだろう。夏祭りも「事件」も同じ。非現実的なことは、他人にとっては全てが「楽しいこと」なのかもしれない。
不思議なほど、グラウンドには俺とつばき以外、誰も居なかった。いつもはジョギングをしたり散歩をしている人や、ゲートボールをしている老人会の人達が数人は居るのに。
つばきが振り向いて、俺を見た。何を考えている表情か分からない。
「昨日、二人よりも先に帰ったじゃない?その後で考えてたの。カンナちゃんに話さなきゃいけないことがあるって。カンナちゃんだけに、この夏が終わってしまう前に。」
「話したいこと?」
「そう。とーか君には…ごめんね。聞かれたくなかったから、おうちの人達も寝ちゃった頃に、誰にも言わないで一人で来てって、防波堤に呼び出したの。」
「何でそんな危ない場所に…。お前は昨日だって…!」
つばきが俺の話を遮る様に、わざとらしく大きめの溜め息をついて、肩を上下させた。
「とーか君が知ったら今みたいに怒るじゃない。それに、おうちの人がそんな時間に家を出してくれるとも思えない。口止めしてないと、とーか君の耳にも入るって思ったし。誰にも気づかれないでカンナちゃんと二人っきりで会えるなんて、とーか君が嫌ってるこんな田舎町の、そんな時間の、暗い防波堤くらいしか無いんだよ!」
ヒステリーに感じる声でつばきが声を荒げたかと思うと、スッと声のトーンを落として「とーか君と違って。私にはそんな条件しか残されて無かった。」と言った。
「そんな場所や時間じゃなくても、昼間にお前の部屋とかでも良かったんじゃないのか!?」
「そんな結果論。今言ったってもう、しょうがないじゃない。嫉妬してるの?カンナちゃんの最期に二人っきりで会っていたのが自分じゃなくて私だったから。カンナちゃんの最期を知っているのが私だから。花火大会、二人だけで行かせてあげたじゃない。カンナちゃんとの夏休みの思い出を作りたいって願い、叶えてあげたでしょ?」
「お前…。」



