グラウンドには思った通り、沢山の町民が集まっていた。改めて見ると、この町にだってこんなに人が住んでいたのかと実感する。こんなに沢山の人が集まっている光景は、この町では滅多に見かけない。

グラウンドの中央には櫓が組まれていて、スタンドマイクや音響機材、和太鼓なんかも置いてある。どこから借りてきて、誰がどうやってセッティングしたんだろう。
こんなに廃れた町でも、こういうイベントの時の大人の力は凄いなと感心する。

グラウンドをグルっと一周取り囲む様に、色んな出店もあった。
焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、フルーツ飴、綿菓子、フライドポテト、カレー、唐揚げや焼き鳥もある。
スーパーボールやヨーヨー、金魚すくいの周りには、既に小さい子供が集まっている。

「ねー!何食べる!?」

つばきが待ちきれないって様子でカンナの腕をグイグイ引っ張った。

「はいはい。つばきは何が食べたいの?」

「ぜーんぶ!」

「それは無理でしょ。」

カンナがくすくす笑って、ちょっとずつにしなさいって宥めている。

「えー、だってお好み焼きもたこ焼きも焼きそばも食べたいし…りんご飴は必須!」

「お好み焼きとたこ焼きと焼きそばは全部ソース味じゃん。一個でいいだろ。」

俺の言葉につばきは膨れっ面になった。

「とーか君、本気で言ってるの!?たこ焼きに麺は入ってないし、お好み焼きにはタコは入ってないし、焼きそばとお好み焼きだって違う具材だし形だって、使ってるソースだって違う味だから!」

つばきの勢いに押されながらカンナは子供をあやす様に「落ち着いて。」と背中をぽんぽんしている。

「あー、分かった分かった。じゃあ一個ずつ買って三人で分けよう。」

「やったー!」

全部買う、ということでつばきの機嫌はようやく落ち着いた。ソース物の全部を食べても、りんご飴も焼き鳥も、ひょっとしたらカレーだって食べてしまいそうな勢いだった。
本当にちょっとずつで良かったのに、たこ焼き担当の自治会のおじさんは「いつも仲良しの三人にオマケ!」とか豪快に笑ってたこ焼きの数を増やしてくれたし、焼きそば担当のつばきの家の隣のおばさんは猫可愛がりしているつばきの為に大きい方のパックに焼きそばを詰めてくれるし、お好み焼き担当のカンナのおじさんは一枚しか頼んでいないのに三枚つけた。「透華!成長期なんだから足りないだろ!」とか言いながら。

「こんなにどうするんだよ…。絶対食べきれないじゃん。」

「食べきれなかったら持って帰ればいいじゃん。」

つばきは全部のオマケを心底喜んでハシャいでいる。

「んー。まぁ…そうだな。」

グラウンドに用意されたイベント用のテーブルとパイプ椅子が並んでいる所の一ヶ所を陣取って、買ってきた食べ物を広げた。パックを開けるとソースのいい香りが漂って、空腹の胃がキュッとなった。
お好み焼きを待っている間につばきは焼き鳥も買ってきていた。本当によく食べるのに痩せているから不思議だ。