昼休みの昼食は、どこで食べても良かった。
俺は今日みたいにカンナやつばきと食べたり、一人で食堂に行ったり、他の友達と食べたり、特に決まった昼休みは過ごしていないけれど、今日はカンナのことがやっぱり気になるし、三人で食べることにした。
つばきは決まってカンナと一緒に過ごしている。他の友達と昼休みを過ごしている姿は、あまり記憶に無い。

俺達は食堂まで行って、空いている席に座った。屋上や裏庭で食べることもあるけれど、最近はずっと雨が降っているから、外より室内で過ごすことばかりだ。
食堂も梅雨に入ってからはいつもより混雑している。

席に座ったつばきが早速弁当を広げ始めた。俺は弁当を持ってきていないから、食券を買いに向かった。
今日は日替わりA定食の唐揚げが食べたかったけれど、売り切れだ。だから日替わりB定食の生姜焼きにした。食堂が混んでいる時は、食べたい物が売り切れていることも多い。唐揚げを頬張っている生徒が恨めしい。

カンナとつばきが座っている席に戻ると、つばきは嬉しそうにパクパク弁当を食べていた。卵焼きの黄色が鮮やかで、本当に美味しそうだった。
カンナはまだ、弁当箱を開けていない。テーブルの上に置いたランチバッグをギュッと握ったまま、ジッとしている。

俺は生姜焼き定食が乗ったトレイを置きながらカンナに言った。

「どうした?具合悪い?」

「…ううん。大丈夫。」

カンナは俺を見て、ゆるゆると、弱く笑った。

「食欲ないの?」

つばきが口に手を当てながら言った。そのままペットボトルのお茶をゴクっと飲んで、またカンナをジッと見つめている。
またあの目だ、と思った。何かを見透かす様な、見られているこっちの方が、目を離せなくなる様な瞳。
つばきはいつからこんな目をするようになったんだろう。少なくともこの夏までには知らなかったつばきの目に、胸騒ぎを感じた。

つばきに見られているカンナもつばきを見たけれど、すぐに「大丈夫。」と言ってようやく弁当を広げ始めた。
けれど、広げた弁当を結局食べないまま、カンナが「あのね…。」と言った。