もうすぐ時間が過ぎて1時間が経つ。
彼は来ない。
彼女は泣いていた。
せっかく綺麗にしていた化粧も落ちてしまっている。

その時、公園の向こうで彼氏が走ってくる姿が見えた。
彼女からはまだ見えないだろうけど、きっと間に合うだろう。

その時、彼は立ち止まった。
近くで子供が泣いている。
どうやら木に風船が引っかかってしまい、取れなくなっているらしい。
なんというベタな展開なんだろう。

彼はスーツの上着を脱ぐと、木に登りだした。
泣いている子供をほっとけない彼の優しさに、彼女も惹かれたのだろう。
やはりこの男には敵わない。

しかし彼女はそろそろ帰ってしまう。
もう1時間が経とうとしている。
僕は彼女になんとか伝えようとした。

「もうすぐ彼氏が来るよ!もう来るから待ってて!!」

叫ぶ僕を見ても、彼女は僕を睨みつけるだけだった。
やはり僕が声をかけても相手にされない。

僕は迷った。
これだけはやりたくなかった。
みんなを混乱させてしまうかもしれないから。
だけど、僕は彼女の幸せを願っている。

だから僕は時を止める。
僕は時の番人だ。
少しだけなら時間を止められる。