「あかり偉い!」
「そんなことないよ。体調悪そうな人がいたら誰でも助けようとするから」
「あかりが助けることに意味があるの。そのサラリーマン幸運」
「唯子どうしたの?」
「ごめんなんでもない」
 


 遅刻ギリギリで教室に飛び込み遅刻を回避したあかりは、平和に一日授業を終え、ただいま唯子と帰宅中である。


 商店街までの道を、あかりは自転車を押し唯子に歩幅を合わせながら、今朝の事件の詳細を話す。


 すると、唯子はあかり過激派なので、これ以上好きにさせないでくれと自分の心臓のあたりを掴む。あかりはそんな唯子の奇行を見て、体調が悪いのかと心配になった。



「唯子も熱中症気を付けてね。水筒あげようか?」
「大丈夫っ……あかりの尊さにやられてただけだから」
「別に尊くないから」



 あかりはお世話した人間を、自分でも気付かぬうちに沼に突き落としている人間だ。


 その明るい性格や無意識な優しさにやられ、あかりは良くも悪くも人に好かれやすい。


 唯子とは商店街のアーケード前でいつも別れる。あかりはいまだに心臓を掴む唯子を見送り、やっと自分も自転車に跨った。


 今日の晩ご飯は、総一郎のリクエストのエビチリにしよう。


 ほのぼのとそう思い、走り出そうとした瞬間、突然自転車の荷台が何かに引かれた。