総一郎は隼也の勘違いを知らない。なのでここにそれを訂正する人間もいないわけで、隼也はまさか総一郎が女子高生と同居しているなんて、夢にも思っていない。
「その人がめちゃくちゃ世話焼いてくれて、生活整えてくれてから、なんか調子いい。たくさん動いたら、たくさん食ってたくさん休む。その環境をくれる」
「だからか……。休息は必要だもんな。お前その人に感謝しろよマジで。迷惑はかけるな」
「もうしてる。迷惑はかけない」
「俺もしっかり食って休むか。オーバーワークやめよー」
「そうだ。部活終わってからランニングに筋トレなんてやり過ぎだから」
「はいはい」
二人は住宅街の別れ道で軽く手を上げ、帰路に着く。
隼也の脳内にはエプロンをしたおじさん。一方、総一郎の脳内には、エプロンをしたあかり。
一体どこまで勘違いは続くのか。ここにいる誰も分からない。



