「俺もお前に負けたくない。だから恥を忍んで聞く。どうしてそんなに調子が良い」
「…………」
「栗最中3個詰めで手を打とう」
「……ウッ」
総一郎は隼也の家の栗最中が好物だ。それを餌にされたら食いつかないわけにいかない。総一郎は渋々口を開く。
「最近、同居人ができて」
「は?」
「……この前助けてくれた人」
「……あーー! あの、良い人!」
「そう。良い人」
隼也は左の手のひらに右手で作ったグーをポンと乗せる。
あの親切なサラリーマンのおじさんか、と隼也の中で勝手に納得した。けど、何故同居に至ったのかが気になる。
「なんでそんなことになったんだよ」
「なんか、俺が一人暮らしが大変なのを知って、世話を申し出てくれた」
「うわ、めっちゃ良い人」
「人の世話をするのが生き甲斐らしい」
「そんな生き甲斐初めて聞いた」
「俺も」
クラスで流れていた噂では、おじさんはシングルファザーで一人娘がいる。
もう、子供の世話だけできっと大変なのに、それ以上を求めるのか。
世の中には変わった人もいるもんだな、と隼也は思った。



