「お母さん!! お願い、私も連れてって!!」
「ごめんね、あかり。けど、あかりは高校あと2年あるし……」
「そんな、だったら転校して」
「頑張って勉強して入った高校でしょう?」



 リビングで必死に縋り付くあかりの頭を撫で、母は眉を下げる。


 あかりが2年生に進級したばかりの4月。


 田舎に住む父方の祖母が、体調を崩したきり寝たきりになってしまったという連絡を受け、タイミング良く仕事をリモートワークに切り替えたばかりだった父と、お世話好きな母はたった一晩で田舎への引っ越しを決めた。


 田舎の祖母と仲良しの母は、恩返しとばかりにお世話を焼く気満々だし、父は父で久々の田舎での生活にワクワクしていて、理由はどうであれ、引っ越しにとにかく前向きだった。


 あかり達姉弟を除いては。