「すっげー! 総一郎の弁当豪華だなー! 母ちゃん帰ってきたの?」
「違う」
「は? じゃあ誰が作ってくれたんだよ。お前料理出来ねーだろ」



 その質問に、クラスメイト、特に女子達の耳はあの有名な像の如く大きくなっていた。さて、総一郎はなんと答える。



「昨日会った、親切な人」
「……なーんだ、お前また行き倒れたのか! 保護先の人が作ってくれたの? お前のこと助けてくれるの、大体優しいばーちゃんだもんな〜」
「ばーちゃんじゃないけど、なんか、すげー優しい人。飯も風呂も貸してくれた」
「へ〜、じゃあ今回若めな人が助けてくれたんだな〜。めっちゃ良い人じゃん」
「めちゃくちゃ良い人」



 隼也はこの時点で、若いといってもそこそこ年齢のいったおじさんが総一郎を助けてくれたのだと思い込んだ。何故ならばーちゃんじゃないと総一郎が言ったから。思い込みは怖い。


 そして、隼也は弁当の女物の包みを見ていない。


 料理の上手いおじさんが総一郎を助けてくれた。クラスメイト達もそこで勝手に、おじさんに娘でもいて、その包みを使ったんだろうと思い込んだ。そして数日後にはその話に尾びれがつき、シングルファザーのおじさんに助けられた総一郎の図が完成する。