「ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」
「こちらこそ?」
「ううん、こっちの話。それより今6時なんだけど、朝ご飯食べてから家に戻る?」
「え」
「あ、もしかして……知らない人のご飯食べるの、嫌とか……?」



 見るからにシュンとして肩を落とすあかりに、総一郎は首をブンブン横に振る。


 総一郎はただ驚いただけだった。ここまで面倒を見て、朝食までご馳走してくれるというあかりのもてなしっぷりに。


 総一郎は人の作ったご飯に飢えている。勿論遠慮なくいただきたい。



「食べたい」
「! 食べて食べてっ!」



 あかりは総一郎の様子を見てころりと明るい表情をすると、総一郎の背中を押してリビングに招いた。


 ダイニングテーブルには、味噌汁とだし巻き卵、きゅうりの浅漬け。それはもう理想の朝食が並んでいた。


 総一郎のお腹はぐうぐう鳴り響き、その素晴らしい朝食に釣られるがまま席に着く。


 あかりは目をきらめかせる総一郎の様子を見てくすりと笑うと、ダイニングテーブルの脇にある炊飯器をかぱりと開ける。