総一郎は驚いていた。


 何故家に帰ったはずの自分が、間取りの同じ見知らぬ家で客用布団に寝かされていたのからだ。


 もしかして誘拐か? しかし身体には傷一つないどころか、ピカピカしているし、髪の毛に触れればいつもよりサラサラだ。多分誘拐ではない。どうやら風呂に入ったらしいと総一郎は理解した。


 知らない家で知らないうちに風呂に入れられていたら普通パニックだが、総一郎は末っ子の中の末っ子。お世話され慣れていることから、この状況に適応するのが早い。


 閉められた和室の扉の隙間から味噌汁の匂いが漂ってきて、お腹がぐぅぅっと鳴る。今は何時なんだろう。


 総一郎が和室の扉からリビングの様子を伺おうとしたそのとき、扉が開いた。


 そこからぴょこりと身長の低い女が顔を出す。