あかりは帰宅後キッチンで忙しなく動き回っていた。その表情は怒りに───。


 なんと笑顔だ。あれ、全然怒っていない。


 だって、なんと、本日三名もの高校生男児の晩御飯を作ることが出来るのだ。
 あかりにとってこれはとんだご褒美タイムである。


 部活男子の胃袋を満たすことが出来るなんて、お世話大好きあかりにとって楽しみでしかない。


 あかりはじゅわじゅわと油の中できつね色になっていくから揚げの衣を見つめながら、ほわっと息を吐いた。



「あとはエビフライにポテトサラダ……茄子のお味噌汁……あっ、キャベツとこま肉があふから回鍋肉も作ろう」



 自分の作ったご飯を美味しく食べてもらうのが大好きなあかりは、腕によりをかけて手際良く調理を進める。


 そう、あかりは自分で言っておいて忘れているが、彼等はあかりに怒られて本日ここに来る。仲良く食卓を囲みにくるわけではない。


 しかし、すっかりきっぱり脳がお世話モードにシフトチェンジしてしまったあかりはそれを思い出せない。


 あかりは三つ子によくお説教をしていたが、その度怒りは持続しなかった。今回もそうである。
 お弁当を届けられてよかったー、ということしかもはや頭にない。