マンションに着き、自宅に着く。そこまであかりは無言だった。そして、総一郎も同じように無言。


 いつも二人に会話があるわけではない。だが、お互いが無言であろうとも、その間に流れる空気は緩くて過ごしやすいものだった。


 けど、今は空気がピリついている。


 あかりは、いくら清谷と仲が悪くてもあの態度は良くない。最後まで謝らなかった総一郎に頭にきていた。


 いつもはどんなに折れなくても、理由を説明すれば柔軟に対応するタイプなのに。今日の頑固さはすごかった。


 二人は無言で手洗いうがいを済ませ、向かい合ってダイニングテーブルに座る。



「総一郎くん」
「ハイ」
「突然現れて、なんであんなことしたの」
「……今日の部活、コーチの都合で少し早く終わって。あかりに会いたくて急いで帰ってたら。アイツが居たから」
「…………」
「あかりが他の男と……寧ろ、アイツと居るのは無理。気に入らない。我慢できない」