うつむいて唇を噛みしめるツバサくんを
抱きしめたい。

「どういう事」

そう聞く私にため息まじりに答えた。

「今日、カスミちゃんと話したんだ。
最近、連絡しても返事ないし、
会っても忙しそうで、
話せなくて避けられてるから。
なぁなに言われて頑張ったんだよ。
もうずっと話せてないから、
思い切って話したんだ。
そしたら、私の事見てないって言われて。
俺、分かんなくて。
本当の俺も見せてないって。
私のどこが好きなのかって聞かれて、
すぐ出なくて。
すごく好きなのに。」

すごく好きなのに。

その言葉が私を深く傷つける。
でも同時にツバサくんのツライ思いが、
私に伝わってきた。

助けてあげたい。

別れろって思う私と助けたい私がいる。

どっちも真実だ。

「それに、なぁなの事も言うんだ。」

ドキっとした。

「え?なんて」

「彼女がいるのに、
なぁなと2人で会うのはおかしいって。
なぁなとつきあえばって。
俺がなぁなは友達だって、
付き合うとかはないって、
いくら言っても信じてくれなくて」

ズキンと傷が深くなった。

そう、だよね。

友達だ。

どこまで行っても友達だ。

もう、いいよ、分かった。

知ってたから大丈夫、
ツバサくんの彼女には絶対になれないって。

でも、心のどこがで結局は戻ってくるんじゃないかとも思ってた。

ツバサくんは女の子の気持ちも分からないし、
恋愛苦手で直球で駆け引きもできないし、
彼女にフラれて戻ってくると思ってた。

最後は私しかいないって。

だから、カスミちゃんと上手くいってないの、
嬉しかったけど、当然だとも思ってた。

勇磨の言う通りだ。

私はサイテーだ。

ツバサくんをバカにしてたんだ。

わたしを見てくれなくても、
例え恋愛の相談でも、そばにいて、
自分に都合のいい事だけ言って、
別れるよう勧めてた。

騙せるって思ってた。

なんてヒドイ女。

大好きな人が幸せになる事、
喜べないなんて。

ツバサくんを好きでいる資格なんてないね。

「なぁな、どうした、顔が真っ青だよ。寒い?」

優しく肩に触れるツバサくんの手を払った。

「勇磨以外は私に触れないんだよ。
勇磨との約束、やっぱり守る」

驚いて私を見る。

ごめん。

「ツバサくん、
本当にカスミちゃんの言う事が分からないの?
バカなの?何で彼女がいるのに女友達と会うの?
というか男女で友情なんて成立しないんだよ。」

ごめん。

「何か目的がなきゃ、成立しない。
私にも目的があって、
ツバサくんのくだらない話に付き合ってるわけ。
それも分からないなんて、本当にバカ。」

ごめん。ツバサくん。

「もーバカには付き合えない。もう疲れた。
自分の事は自分で解決してよ。さよなら」

ごめんね。

呆然としてるツバサくんを置いて走り出した。

涙が止まらない。

誰か助けて!

私、どんどん自分が嫌いになる。

もうこれ以上、自分を嫌いになりたくない!

ツバサくんを傷つけた。

最後にツバサくんに酷いことしか言えなかった。

ずっと一緒にいてくれたのに。

傷つける事しかできなかった。

こんなに好きなのに。

本当にサイテーだ。

部屋に戻りツバサくんのアドレスを削除した。

本当に終わりだ。