ふぁ、ファンクラブ!

嘘でしょ。

思わず勇磨を見つめた。

ちょっと得意げに私を見る。

勇磨って、そんなにモテるんだ。

どこにそんな魅力があるんだろう。

愛想もないし、
というか感じ悪いし笑わないし、
いつもトケドゲしいのに。

「なんだよ、文句あんのか」

いや、文句しかない。

「あの、ちなみに、
勇磨のどの辺がそんなにモテるの?
みんな、どこに惹かれるの?」

カスミちゃんがクスクス笑う。

「え、だって、すごくカッコいいじゃん。
顔もスタイルもその辺のアイドルなんかの
数十倍素敵だよね。
顔の好みとかの問題を超越してる。
ナナちゃんも本当は分かってるんでしょ」

あ、そういう事か。

カスミちゃんの言葉で合致した。

勇磨、前に言ってた。

作戦とか、そういう手とか。
なるほどね。

「ナナは天然だよね。
俺は芋に見えるらしいから」

ミアンちゃーん。
言ったんだな、勇磨に。

「もう俺の事はいいって、前向けって」

2人を追い払う。

ツバサくんがまた、
腑に落ちない顔をして
前を向く。

カスミちゃんは、
やっぱり見透かした目で私を見てから、
ツバサくんの肩に手を置いた。

「私達はお邪魔だって。
いいね、仲良しで」

この女。
本当に嫌い!

絶対、私の気持ち知ってる!
嫌い、嫌い

「おい、ナナ、俺を無視するな。」

睨んで私を見る勇磨をゆっくりと観察した。

顔、ねぇ。確かに整ってるよね。
キレイな顔してる。

でも、ダメだ。

勇磨の色んな顔が思い浮かんで、
ドキドキできない。

性格の悪さが上回る。

一緒に笑い合える友達としては、
最高なんだけどね。

「なんだよ、言ってみろ」

私が観察してるのがバレた。

「ごめん、バレた?
正直、どうして勇磨がモテるのか分かんないや。
その外見を以ってしても、
内面の酷さを補えてないよね。
でも友達としては好きだよ。
面白いし優しいし、いいところ、いっぱいある。
ドキドキはしないけど、大好きだな」

うん、勇磨と友達になって良かった。

「大好きとか言うな。焦る」

ちょっと照れて目線を外す。

「へぇ、モテモテなのに、
そんな言葉で照れるんだね。
慣れるって事はないんだね。
私なんて告白された事もないし、
未知の世界だな」

私を睨み自分の頭をクシャっとする。

「うるせ、やっぱ、ナナに罰ゲームな。
映画の間、俺に触るの禁止」

え、何、その罰ゲーム。
余裕なんですけど!

っていうか、触る事なんてある?

訳が分からず、
なんかムカムカしてる間に始まった。

オープニングですぐに分かった。

これは罰ゲームだ。

勇磨、なんで知ってたんだろう。
私、ホラーが苦手。

しかも、これ、日本のオバケ物!

しつこいくらいに突然出てきて、
心臓に悪いあのホラー。

目をつむっても怖いものは怖いから、
だったら見ちゃう。

でも、静寂からの爆音と共に出てくる
大画面いっぱいのオバケに思わず声が出た。

「わぁ」

勇磨に触れそうになって寸前で耐えた。

でも大画面のオバケより見たくないものが今、
見えた。

カスミちゃんがツバサくんの腕にすがりつく。

ツバサくんが優しく微笑みかけて、
カスミちゃんの手に自分の手を重ねた。

嘘、ツバサくん、なんで。

ぎゅっと握っているように見える。
ドキドキが止まらない中、またオバケが出る。

「わぁ」

また勇磨にすがりそうになって耐える。

なんだよ、もう!

前の2人は見ない!

でも見えちゃう。肩が触れ合ってる。

頭が近い。

なんで見えちゃうんだろう。

またオバケが出た!

「わぁ」

何に驚いて何が見たくないのか、
分からなくなり声が震えた。
出る出る出る、そう終始脅かす音響。

近づく2人。

もう、やめて!

それ以上、近付かないで。

「罰ゲーム終わり」

勇磨が囁いて、
私の頭を自分の肩に乗せるように腕を回した。

その手で私の目を隠す。

「もう、見るな。」

映画を?2人を?

だけど。

もう、無理

勇磨の言葉に甘えて、目を閉じた。