頬杖をついて、こちらを覗き込む勇磨。

その目には、
あきらかに私をバカにしている光がこもる。

ほんと、この人のどこかそんなにいいのか。

「何、ナナもマネージャーやりたいの?
無理だろ、ナナはガサツだもんな」

ガサツ?

は?

なんて言った、今。

「ほら、そういう所だよ。
そんなケンカっ早いマネージャーはヤダな。
というか、マネージャーはさ、
男の世話したい、
下心ありありの子がするんじゃねーの。
ナナ、そういうの無理だろ。」

全国のマネージャーさんに謝れ!バカ!

それにしても、私をなんだと思ってるのか。

酷くない?

そう言う私にあからさまに不満顔になる。

「は?それを言うならナナの方が、
俺をなんだと思ってるの?
きっと俺、ナナの中で
ケチョンケチョンにされてんだろうなぁ。」

そう言って、こっちを見て笑う。

勇磨の笑顔はいいなって思う。

でもさすがにもう陰気野郎ではないけど、
中2病疑惑とコミュ力、国語力不足は否めない。

あと性格は悪いかな。歪んでる。意地悪だしね。

「あーさっきのマネージャーの話だけど、
やっぱりないかな。
それはマネージャーとしての仕事じゃなくて、
特別だな。
モテない奴でも気付くんじゃね?
俺の事好きなの?って」

やっぱ、勇磨って意地悪。

散々、脱線して話が逸れたのに
今、元に戻さないでよ。

しかも私が1番聞きたくない答え。

バーカ。

「なんだよ、何、怒ってんだよ。
感情の起伏ヤバイな」

もう、なんとでも言え。

落ち着こう。

あー。
落ち着かない。

やっぱ、そのマネージャー、
ツバサくんの事、好きなのかな。

ダメダメ、考えない。

「えーでも意外だなぁ。
ナナもいっちょ前に男に興味あんだな」

頭の後ろで指を組んで体をそらし椅子にもたれる。

「だってアレだろ。
野球部のマネージャーになりたいって話だろ。
何?ああいう王道スタイルが好きなんだな」

ケラケラ笑う。
そうか、そうか、と納得してる。

「うん、確かにマネージャーになって、
カッコいい男の子の世話はしてみたい。
で、恋に発展するなんていいなぁ、
とは思うけどさ」

まぁ、私には無理かな。
正直、面倒臭い。

横目でチラッと軽蔑の眼差しで私を見る。

「あーミアンもリノも
同じようなことを言ってんな。
アイツらはそれを実行して、
罠を仕掛けて男をはめる。
家で作戦会議してんだぜ。すげぇ怖いよ。
ナナ、アイツらとあんまり仲良くするなよ。
ナナまでああなったら、
俺の落ち着く場所がなくなる」

家族をなんて言いかた。

だけど、2人のあの美貌で落ちない男はいない。

更に罠まで仕掛けたらイチコロだ。

私も罠にかけて欲しい。

どんな罠なんだろ。

想像して1人で笑った。

不審な目で私を見る勇磨は無視だ。

ふと思った。

あの2人なら、どうするんだろう。
どんな罠を仕掛けてツバサくんを落とすのかな。

聞いてみたい。