激しい曲が流れ同時にライトが上下左右に動く

会場が輝く!

みんなの歓声に私がMAXになる。

ああ、この感じ。

「誰?誰?」

と声が上がる。

1発目はキレキレダンスで度肝を抜こうぜ!

トモの声が心に響く。

上がる!急上昇だ!

ヤバイ!

この感じ、来る!

子どもの頃に感じた、
ステージの爽快感と、
アドレナリンがぞわぞわ感!

勇磨がこっちを見てる。

気がついたかな。

口を開けてポカンとして見てる。

ツバサくんは手を振って、
「なぁな」って呼んでくれてる。

ツバサくんは知ってたもんね、私のダンス。

勇磨、好きだよ!

最後はトリプル回転で決めた。

また照明が落ちる。

歓声とともに、
メンバーの名前を呼ぶ声がする。

誰かが私の名前も呼んでくれた。

タツキがMCで繋ぐ間に着替えをし、
アイドルダンスのスタンバイ。

曲が流れて1人ずつ登場する演出。

ラストの私はかなりラブリーに登場する。

そういえば恥ずかしかったな、
ツバサくんに見られたくなくて。

こういうの、1番恥ずかしかった。

でも今は違う。

どんな私も勇磨に見て欲しい。

勇磨に認めて欲しい。

見てね、勇磨。

勇磨は人を掻き分けて前に来ていた。

この曲はね、
かわいいアイドルダンスなんだよ。

スネたり甘えたり、
純粋に好きって気持ちを伝える。

私も伝える。

中2病で陰気野郎。

コミュ力なしの国語力もない。

そんな勇磨をぶち壊したかった。

初めは大っ嫌いだったのに、結局、
近づいてケンカして友達になった。

勇磨が好き。

いっつも、くっついていたいくらい大好きなんだ。

他の人なんて見ないでね、私だけ見てほしい。

勇磨はただ私を見つめてた。

最高の笑顔で踊り切った。

最後は掛け声までかけてくれる人もいて、
私達にファンが付いた。

私のファンクラブができるのも近いかもね。

「やったね」

女子チームでハイタッチした。

男子チームのストリート系は、
みんな息を呑んで見ていた。

「すごい」

そんな声も聞こえて、
口笛を吹いてくれる人もいた。

またタツキのMC

「ラストの曲は、
うちの大事なスターのソロから始まる。
彼女は硬い殻にこもっていて、
中々抜け出せず、俺達にも割れなかった。
でも別のスターが割ってくれた。
俺達の大事な、
生まれたてのひよこの想いを、
うけとめてくれ。」

最後の叫びを聞いて、
私は舞台へと歩き出した。