無情にも日々は過ぎていく。

全く練習の成果が見られないままだ。

毎日バスケ部の練習を見に行った。

男子バスケ部は女子のギャラリーか多く、
みんな大騒ぎして見てる。

初めて見たときは、なんの騒ぎかと驚いたけど、

結局面倒で近くまで行かなかった。

男子のバスケを見ても、
私には役に立たないからね。

女子のバスケ部ですら、
レベルが高くて全くついていけない。

だけど、たまたま私と同じ1年で、
未経験者がいたんだろう、
彼女達の指導が体育館の外でおこなわれてたから、それを見学した。

手首の動きやボールの回転など、
詳しく先輩がレクチャーしてるのを、
私も怪しまれながらメモした。

そのまま公園に移動して練習した。

全く、入らずイライラする。

子どもにも笑われる始末。

「お姉ちゃんヘタクソ」

子どもは正直だ。

くっそー

ヤケクソになっても入らない。

泣けてくる。

街灯が近くにあるから、
暗くてなっても少しは練習ができた。

でも今日も1回も入らなかった。

あと2週間で入るようになるのかな。

絶望的になる。

ふと時計を見上げ、
その先にこっちを見ながら通り過ぎる工藤くんを、見つけた。

へぇ、家、こっち方面なんだ。

まぁどうでもいいけどね。

私を見たのに全く表情を変えず、
なかった事として通り過ぎていく。

アイツはヤバイな。

もう帰って休もう。

筋肉痛の体を引きずって家に帰った。
クタクタのままお風呂に入りベットに倒れこんだ。

携帯が鳴る。

ツバサくんだ!

飛び起きて出る。

「ツバサくん、久しぶり!」

電話の向こうで笑い声がする。

「なぁな、元気だね。」

「うん、元気だよ」

本当はクタクタだけどね。

「なぁなは元気でいーなぁ。
俺はさ、部活で上手くいかなくてさ、
ピッチャーできないかもしれない」

声が沈んでる。

どうにかして助けてあげたい。
ツバサくん、元気出して。

でも私にはアドバイスできる事がない。

なんで野球やって来なかったかなぁ、私。

「私、何もアドバイスできなくてごめん。」

電話の向こうでまた笑う。

「なぁなにアドバイス求めてないって。
おもしろいなぁ。
言いたかっただけだからさ。
なんか話したら元気出た。
まだもう少し頑張ってみるよ。」

そう言って少し話してから切れた。

ちょっと嬉しい。

いや、すごく嬉しい。

話して元気になったなんて。

私も元気出た!

明日からも特訓、頑張ろう。

連日の猛特訓のせいで手首が痛い。

でもなんとかシュートできるようになりたい。

そのまま落ちるように眠った