まだ南さんは嫌味を言っている。

男好きとか、イケメンみんな独り占めしようとしてるとか。

気にしない。

気配で分かる程、
感じ悪いオーラを出してる勇磨も気にしない。

「何あいつ、王子様気取りだな。
俺の言葉だけ聞けって、洗脳かよ。
お前、ああいうのが好きだったんだな。」

またチクチクする。

なんだよ、勇磨!勝手に怒って。

私、何にも言ってないのに。

勇磨も一体なんなの。

イライラする。

お前って言うな!

なんでそんな態度なの?

私は何も悪い事してない。

南さんが言ったような、
不良行為もタバコも酒も。

それにトモとだって何もない。

仲間だってそう言ったのに。

チカや勇磨の部活の仲間とどう違うの。

派手だから。

金髪だから。

どんな私も嫌いにならないって言ったなら、
私を信じて欲しいのに。

勇磨の嘘つき。

勇磨には信じて欲しかった。

本当に信じて欲しかった。

勇磨に見せたくて始めたのに。

気がつくと頰に涙がつたってた。

あわてて拭った。

なんで泣くんだろう、私。

下を向いて髪で涙を隠した。

髪、長くしてて助かったよ。

ちょっと笑える。

他の誰に何て言われても構わない。

勇磨だけには誤解されたくないし、
私の大切な仲間を認めて欲しいのに。

そう言えない。

勇磨の放つ氷のオーラが、高い鉄壁に感じる。

もう、いいや。
勇磨の事はもういいや。

勝手に怒ってればいい。

嫌いだよ、大っ嫌い。

カモフラージュで開いたノートに雫が落ちる。

何してるんだろう、私。

気持ちを切り替えてられぬまま、
放課後を迎えた。

「ちび、行くぞ」

その声に立ち上がりドアへ向かう。

様子のおかしい私に気付いたトモは、
顔を覗き込んで勇磨の席に向かった。

「トモ?」

私の声は無視して勇磨の前に立つ。
勇磨も立ち上がりトモを睨む。

「なんか用?」

トモは黙って勇磨の机を乱暴に叩いた。

バンッと大きな音が教室に響く。

みんなが注目する。

私も驚いてトモに駆け寄る。

勇磨をグッと睨む目に力が入る。

「ねぇ、アイドルくん。
お前のちっぽけなヤキモチなんか、
どうでもいいんだよ!
だけど、これだけは言っておく。
ちびを傷つけたら許さない。
女に当たるな、ガキ。」

勇磨は黙って私を見た。

泣きはらした顔の私を見た。

一瞬私に近付こうとして止まり、
何も言わずにそのまま教室を出て行った。

勇磨。

追いかけたい。

今すぐ追いかけて話さないと、
もう2度と元の関係に戻れない気がした。

だけどオーディションがある。

私のカバンを持ち、
先を歩くトモを追いかけた。

「ねぇ、ちびはさ、あんなガキが好きなわけ?
男見る目ないね。
なんであんなガキがモテるんだろうな」

そう言って笑う。

違う。

別に好きとかじゃない。