記録的な猛暑で、
モールでの練習が出来なくなった私達は、
トモの家の剣道場を借りて
練習するようになった。

大きな鏡もあり環境も良かった。

他校メンバーとも仲良くなり、
改めてダンスってすごいなって感じた。

タツキがチラシを持って集合をかけた。

「ニュースだぞ!
文化祭のシークレットステージの、
最終審査に残った!」

文化祭!

シークレットステージ!

知ってる。

去年文化祭を見に行った時
シークレットステージって、
みんながお祭り騒ぎしてた。

当日まで何が発表されるかは秘密で、
去年は王子様コンテストだった。

イケメン選び。

中学生だった私は、
イケメンのお兄さんに驚いたし憧れた。

今年も王子様コンテストがあれば、
ダントツで勇磨なんだろうな。

そう思ってまた心がチクっとする。

勇磨を思い出すとチクチクする。

まだ怒ってるよね、きっと。

でも、私を信じない勇磨なんて忘れる!

私、怒ってるし!

忘れた!

最終審査に合格すれば、
私もあのステージに立てる。

どうやったら合格するんだろう。

タツキの話だと今年は3グループで
10分~30分の持ち時間で表現するらしい。

来週、オーディションがあり、
生徒会執行部の公認を受けられれば、
シークレットステージに出られるらしい。

出たい!

目指すは、持ち時間は30分

もちろん文化祭の出し物だから
生徒である事が必須だ。

他校メンバーは残念そう。

でも振り付けや曲、
衣装など協力してくれると言ってくれた。

5人で30分か。

それぞれ踊りたいジャンルを出し合い、
話し合いを重ねた。

「30分の枠を取れたら、
3曲か4曲だな。
女子チームと男子チームで、
それぞれ1曲やるか。
俺は個人的にミッキーに、
アイドル風のブリブリダンスしてもらいたい」

ニヤニヤ笑いながら言うトモに、
ミッキーが蹴りを入れる。

「ざけんなよ」

ミッキーのブリブリか。

私も見たいな。

「俺も見たい」

タツキも乗った。

途端にミッキーが赤くなり照れる。

「冗談やめろって」

でも結局、
男子の圧に押されてミッキーは承諾した。

ミッキーが承諾したという事は、
私もアヤノもブリブリをする事になると、
後で気がつくのだが、

その時の私は別の事に夢中だった。

もしかして、
ミッキーってタツキが好きなのかな。

そう考えたら過去のアレコレがぴったりとハマる。

私が初めて見に来た時も
「タツキの追っかけ」って
言って敵意むき出しだった。

なるほど。

ちょっとニヤニヤしてミッキーを見る。

「何笑ってんだよ、アホちび」

コツンとされる。

うひひ。

笑いが止まらない。

そっか、男勝りなミッキーも恋をするのね。

タツキはどうなんだろ。

あー気になる。

「1曲目は激しいキレキレダンスで度肝を抜こうぜ。
で、男女それぞれのダンスとラストは」

トモが私を見てひと呼吸置く。

「ちびのソロからはじめよう。
ジャズのしっとりした曲調で、
中盤はみんなで盛り上がり、
ラストに向けて希望が見えるような、
そんな作品にしたい。」

驚いてトモを見る。

「なんで私のソロ?」

そう聞く私にトモが笑う。

「それについては誰も異論はないと思うよ。
この中で1番魅せるのはちびだから。
表現力を付けたちびは無敵だ」

アヤノも賛成する

「うん、ナナのダンス、みんなに見せたい!」

タツキも背中を押してくれた。

「このステージに挑戦しようと思ったのは、
ちびがメンバーになってくれたからなんだ。
ちびがいたら成功する。
ちびのソロから始まるナンバーで、
盛り上げようぜ!」

みんなにそう言われて嬉しかった。

不安もあるけど頑張ろうと思った。

9月末の文化祭まであと1ヶ月ちょっと。

まずは来週のオーディションを勝ち抜ける。

もちろん周囲に気付かれないように。

オーディションの為に、
今までのナンバーを5人編成にし直す。

よし、今週は何も考えずに踊ろう。

シークレットステージ、勝ち取るぞ!

そう決意した帰り道、いつもの公園の前に、勇磨が立っていた。