「あなたは未来の自分を殺すことが出来ますか?」

その人物は、未来からやって来た。

「そんなの無理だ。自分が殺しに来ると分かっているのに、わざわざ殺されるはずがない」

その人は言った。

「このナイフは、刺しても痛みはありません。ですが、刺したら必ず死にます。これで10年後の自分を殺しにいきませんか?成功すれば報酬をお支払いします」

僕はお金が必要だった。
親は多額の借金を残して消息を絶った。

未来の自分が幸せな人生を歩んでいたら、僕は自分に殺されないだろう。

僕は未来の自分を殺しに行く。

10年後の未来。
街中を歩くみすぼらしい自分の姿を見て僕は思った。
僕は過去の自分に殺されに来たのだと。

僕はナイフで自分を刺した。

未来の自分は僕に何かを言おうとしていた。

僕は元の世界に戻っていた。

「おめでとうございます」

その人物は姿を消した。