『水龍から作る魔充石の権利。』

それをマイケルは、
ギルドを通じて魔法登録し、
ラジ達にその権利を
迷わずに売った。

ギルドの2階。

今その会議の場所に、
海沿いを治めるギルド長達が、
揃っている事を確認して、
マイケルはラジに視線を向ける。

「わたしは、魔力なしの異邦人
ですが、この藩島に纏わる魔力
の有り方を探求した末に、
目に見えない水龍という生物の
骨が、魔能力の類を保持する
という事を発見しました。」

ラジが徐に頷くのを見て、
マイケルは声を上げる。

ラジ達は初め、
マイケルが魔充石の権利を
海を統べるギルドに売る事を
反対した。
魔充石の特権は登録の仕方で、
莫大な富になると言って。

けれども、
だからこそギルド長が一同に会し
魔充石を藩島中に、
ライフラインに組み込み使う事が
これまでに出来たのだ。

「そして、魔力を持たないから
こそ、その奇跡のような力の
素晴らしさに興味を持ちま
した。そして藩島民の魔力の
源になる何かが、あるのでは
ないかと調べてきたのです。」

明るい白亜の会議場に、
マイケルの声が響く。

マイケルは、、
魔力がないままに、
手にしたウーリーで
城下街に家を買い、
漸く住民権だけでなく、
市民権を手に入れた。

島民が魔力を持つウーリウ藩島に
おえて初快挙めだと、
随分言われた。
だから、魔充石のお蔭だと、
マイケルも心得ている。

「しかし魔力というのは、
我々は持って生まれた時に、
すでに備わるものだ。全てが、
この体の中で完結しておる。」

口髭を蓄えるサクゥテ地区の
ギルド長が、
会議の場で発っする
マイケルの言葉を遮り、
自分の胸をゆっくりと示すと、
他のギルド長も同意に頷いた。

「わたしも、最初は同じ様に
考えていました。けれども。」

通うようになった街の
図書館ービブリオテーカで、
魔能力について調べ、
藩島を歩いて出した結果。

一つの推測をマイケルは
持つようになる。

「ならば、このカフカス王領国民
だけが魔力を持つのは、どうし
てなのでしょうか?しかも、
魔力は訓練で増やす事や、人に
分けることも出来る。それが、
今回生物だけでなく、骨にも
貯める事が出来た。この流動的
性質は、もっと後発的な作用で
はと考えられないでしょうか。」

それはまだ、
マイケルの中でも形にならない
仮説で、
今日はもっと別の提案がある。

それを解っている
ルークが手を上げた。

「ところで、今の話からは何故
ウーリウ藩島の結界に話が、
関係してくるんだ?マイケル。」

ルークの言葉に、
藩島を囲む、
海沿い7つのギルドから来た
代表者達の目が
一斉にマイケルに向いた。

海に面するギルドにとって、
藩島結界に関する問題は、
生死を分ける話となると、
長達の視線で
マイケルは理解する。

「魔力は無尽蔵ではないと、まず
思い出してもらえればと今の話
をしました。その上で、ウーリ
ウ 藩島の結界はどの様に維持
されているか御存じでしょうか」

マイケルは、
ぐるりと7人の長と、
ルークを見回す。

「藩島城の大聖堂におられる、
教皇をはじめとする、枢機卿
達が祈りと共にするのだろう!」

キタターラ地区のギルド長が、
当然だという顔で、
隣に座る
フックダン地区のギルド長にも
促して、
マイケルに答えた。

キタターラ、オーベイ、フックダン地区は
マイケル達がいるイェンダとは
島の反対に位置する為、
普段マイケルとは顔通しがない。
まだ
互いの信頼が得られていない
のが、
この空気でマイケルにもわかる。

それでもマイケルは敢えて、
微笑みを作って見せた。

「その通りです。
藩島の地空結界は、聖職者の
日々の祈りと共に成され維持を
されています。実はその祈りの
結界は、結界の力を安定させ
補修をしている性質なのです。
そして、魔力の循環をさせて
走行を担うのが魔導師達。
そのベースになる魔力は驚く
ことに、たった1人の魔力で
結界行使をされています。」

余り島民や王領国民は知らない
内容だと、マイケルは充分
心得ている。
ビブリオテーカでも、歴史学の棚で藩島史実で
マイケルも初めて知った。

「なんと!!そんな状態とは!」

「しかし、となれば、、」

途端に会議場が騒がしくなる。
その騒めきの中で、

「王族、もしくは貴族で、
飛び抜けた魔力量を持つ者。
しかし、そうすれば魔力は、
枯渇するだろうな。悪ければ
命懸けの仕事となるだろう。」

ルークが良く通る声が
マイケルには、やけに聞こえた。