桜色の歌と君。

「花咲さんが歌った方がいい気がするよ。」

困ったように、でもどこかうれしそうに笑う宮野くんに私は風の音が鳴るくらいに勢いよくかぶりを振った。

「私は、みんなの前で歌えないから。」

「緊張するの?」

「それも、あるけど。」

苦い記憶が蘇って、胸がじわりと痛む。

「声が変だって、言われたことがあるの。小学生の時、クラスの男の子たちにからかわれたのが、トラウマで。」

こんな話をしても困らせるだけなのに。

宮野くんは優しいから、つい甘えてしまう。

「もう高校生にもなるのに、変だよね。」

宮野くんは少し悲しそうな瞳で首を振った。

「誰だって、そんなこと言われたら悲しいよ。
花咲さんの声は綺麗だよ、自信持って。」

そう、宮野くんが微笑むだけで。

苦くて、どうしようもなかった感情が、ふわりと和らぎすっと消えていく。

魔法みたいだと思った。

宮野くんともっと早く出会っていれば、あの時泣いていた小さな私は、きっと救われていただろうな。

そんなことを考えた。
また、胸がきゅっと縮んで、切なくなる。

宮野くんの言葉、表情、一つ一つに心が揺れてしまう。

どうしようもないほどに、好きだと思った。