桜色の歌と君。

帰り道、宮野くんと出会った日に見上げた桜の前で足を止めた。

緑の葉に乗った雫が太陽に反射していて、綺麗だ。

なぜだろう。

苦しさがまだ心を支配していて、涙を誘うのに。

木々の青さも、空気に包まれた雨の匂いも、全てが五感を刺激して、愛しさが胸を駆け上がる。

世界が、綺麗に見えるのはなぜだろう。

目の奥が、涙に包まれる。

空を仰ぐと、白い月が淡く霞んで見えた。

夜、布団の中で今日のことを思い出していた。

宮野くんの泣き顔が、脳裏に焼き付いて眠れなかった。

心が言いようのない何かで埋め尽くされているようだった。

ベッドを降りて、使っていないノートを取り出す。

ページを開いて、ペンを持つ。

宮野くんを想って、言葉を綴った。