「……予定、あるよ。クラスの男の子とご飯行く」


たまには私に主導権を渡せっ、という思いを込めて嘘をつくと、碧は余裕そうに笑った。


「嘘つくなって。別に、ドキドキしてんのは桜子だけじゃないんだから」


…全部お見通しなんだ。


それに…碧も……ドキドキしてくれてるんだ。


「なーんだ。じゃあ予定ないっ。一緒に帰ろっ」


すくっと立ち上がり、碧に手を伸ばす。


「おう。んじゃ、俺らもう帰るから、お前ら元気でな」


まだまだ談笑を続けている部員に手を振り、グラウンドを後にする。


振り返ることはしなかった。


振り返ると、帰りたくなくなっちゃうから。


このグラウンドは1番想いのつまった場所。


バイバイ…藤北。


バイバイ…皆…。