「嘘……」


碧のプロ初ホームラン。


こんなに近くに入るなんて…。


“プレゼント”ってまさかこれ…?


だから、比較的入りやすいレフトスタンドの席を用意してくれたの…?


「最高だよ…っ」


なんて粋なプレゼントなんだろう。


先週から、今日この日にホームランを打とうって決めていて、本当に実行しちゃうなんて。


星矢碧は、本当にとんでもない選手だ…。


自慢の彼氏だ─。


「おねーさん、これあげる」


「え……?」


膝の上にポンッと置かれた白球。


驚いて声の主を見ると、まだ小2くらいの男の子だった。


「おねーさん、星矢のホームラン見て泣くほど好きなんでしょ?だからあげるっ」


「でも…キミが捕ったんでしょ?大事にしなきゃ」


ホントはすごく欲しいけど、小さい子どもから譲ってもらうなんて気が引ける。


「星矢がインタビューでよく言ってるんだ。“ファンを笑顔にする選手になりたい”って!だから僕もそうなりたい!」


なんて心が綺麗な子なんだろう。


きっと、憧れの存在である碧の心が綺麗だから。


「ありがとう、ぼうや。一生大切にするね」


碧のホームランボール。


そして、優しく綺麗な心。


これが記念日の贈り物なんだ。


「ありがとう…碧…」