噛み痕にキス


寝室の祭壇を見ても、「おーすげー」と言って終わった。
良いやつ。

「……井花の家にあった洗顔フォーム、誰の?」

胸にひっかかっていたことを聞く。

「洗顔……あの緑のなら姉貴が置いてったやつだけど」
「じゃあ帰る時、何話してたの? 給湯室、で」

もやもやとしたことを。

「伊丹のデスクの動物たちはあと2週間でどこまで増えるかって話」
「……え、あたしの?」
「俺も今度出先で見つけたらやるわ」

手を握られた。

その答えひとつでもやもやが晴れた。
馬鹿だと思う、あたしは。

「おやすみ」

手の甲にまたキス。

「おやすみ」

体温を分け合って、眠った。

明日のお茶が、少し楽しみなのは、黙っておく。





噛み痕にキス
END.
20210815