噛み痕にキス


「もしかして、それで仕事辞めんの?」
「……うん」
「お前、本当に馬鹿だな」
「どうせ馬鹿だよあたしは。救いようのない馬鹿だよ」

テレビからはラブソングが流れる。
最初にリリースされた曲。

「俺はあると思うけど」

井花があたしの手の甲に貼られた絆創膏を撫でた。
顔を上げる。

「……胸? 色気?」
「いや、救いと価値」

断言された。
誰かに、こんな風に救ってもらえる日がくるとは。

「そこは、胸も色気も、って言ってよ」