噛み痕にキス


ぐずぐずと心の奥が燻る、ような気がした。

エレベーターのボタンを押す。後ろで井花の声が近くなった。

「は、伊丹ちょ、待って」
「あ、おつかれ」
「待て」

来たエレベーターに乗り込もうとすると、呼び止められて、足を止める。目の前で無情にもエレベーターの扉が閉まった。

あたしは犬か。

先程までは井花がハチ公だったのに。

「お待たせしました、行こうぜ」
「行くって、帰るんだけど」
「飯どうすんの?」
「さすがに外食飽きたから家で食べる」

エレベーターの扉が再度開く。

一人暮らしをすれば外食率は格段に上がるけれど、ここのところ残業続きで三食ずっと外食。