噛み痕にキス


そんな字は嫌だと思いながら、手を動かす。

井花は野ウサギをこちらに向けて『がんばって!』と言ってきた。気が散る。

昨夜ほどの時間になる前に仕事を切り上げた。

バタバタと帰る用意をしていると、伊丹がいないのに気付いた。帰ったのか、どこかへ行ったのか。

それよりも追悼番組。
腕時計を見る。大丈夫、間に合う。

鞄を持って、残業している面々に挨拶をした。フロアを出ると給湯室で話をする声が聞こえた。

井花と、女性社員。
内容までは分からないが、話に花を咲かせているみたいだった。

待っていたみたいだから声をかけようと思ったけれど、まあいいか。