噛み痕にキス


ずるり、とベッドに戻る。

「帰んの」

疲れと眠気の滲む声で井花が耳元で尋ねてくる。

「うん」
「終電あんの? 泊まってけば」
「無かったらタクシー拾う」

泊まるつもりは最初から無かった。

「……じゃあ送ってく」

井花が起き上がる気配がして、振り向く。
あたしは首を振った。

「いい、本当に。今日は、ありがとう」

よろけながら立ち上がり、リビングにある鞄の中から財布を出して、五枚の札を抜き取る。

寝室に戻ると、床から部屋着を拾う井花がいた。

「これ」
「……は?」
「受け取って」

手を掴んで、乗せた。