髪は濡れていてオールバックになっている。いつか上司の結婚式でそうしていて、女性社員たちから注目されていたのをふと思い出した。
先程、あたしのバスタオルと共に置かれた部屋着を着ている。
「ちょっとだけ」
「まじかよ、眠る?」
「いや……」
隣に井花が座る。腿同士が触れる距離。
近い。
そこからまたぐっと距離が近付き、身を引きそうになった。ソファーがあるので引けず、井花は反対側に置かれたリモコンを取っただけだった。
……今更になって、緊張が。
いや。
「すげえ、今決心の音が聞こえた気がする」
苦笑する横顔。



