悪役令嬢ですが、なぜか婚約者に溺愛されていて断罪されません!



さっきこっそり言われた、いつも通りの意味が分かった。

あれはいつも通り淑女の笑みを浮かべていてと言う意味ではなく、ダンスをいつも通りやろうという意味だったのだ。


周りにもわたくしの準備が整ったと分かった瞬間、部屋の隅にいたオーケストラが演奏を始めた。


その音に合わせて、トーマ様がわたくしをリードする。


通常のパーティーでも、主役が1番のダンスをする。それが開始の合図になるからだ。


どうしてわたくしは今、通常のパーティーの流れで動いているのでしょう?


そう思いながらも、トーマ様のリードに合わせてステップを踏む。くるりと回る度、レースのスカートがふわりと舞う。


トーマ様とは何度も踊ってきたけれど、とってもリードが上手い。

私のくせを拾って、さりげなくフォローしてくれる。


あっという間に1曲が終わり、中央に戻ったわたくし達はピタリと止まった。

その瞬間、会場内にいる人たちからワッと拍手を送られる。