――っ!?いきなり……わたくしはお人形……。


でもそんな表情、まるでトーマ様がわたくしを好きみたいだ。


そんなことあるはずないのに。



「寂しいけど、しょうがないね。今はまだここまで」



離れ難い、これが最後だと思うと悲しみが溢れてくる。


だけど、そんなことなど知らないトーマ様は帰ってパーティーの準備をするよと離れていった。


わたくしは伯爵令嬢なのよ。きちんと感情のコントロールをしなければいけない。悲しみはここで悟られてはいけない。


わたくしは最後まで顔に笑顔を貼り付けて、馬車で帰るトーマ様を見送った。



「……ありがとうございました。さようなら……」



きっと、優しいトーマ様は今日が最後だから。本人には届かなくても伝えたい。


小さくなる馬車に向かって、周りの使用人には聞こえないようにわたくしは小さく呟いた。