「ミーナ…ちゃんと言うべきだったよな。ここじゃなんだから、部屋に戻ろう?」

優しく私の肩を抱くユタ。

私はまだ混乱していたが、ユタの部屋に着くと、玄関先にはあの香水の匂いがしたが、室内はそうでもなかったと気付く。

数えきれないほど来たこの部屋で、私専用のマグカップにホットココアをいれて、渡してくれる。

「なんか…ホントに、何から何までごめん。ちゃんと説明する」

さっきの女性は九州に住んでいるユタの腹違いのお姉さんで、本妻の子と妾の子というせいもあって、これまでずっと険悪な関係にあり、口もろくにきいたことはなかったそう。

しかし、ユタが絶対に会社を継ぎたくはないという思いと、自分の彼に会社を継がせたいというお姉さんとで利害が一致し、姉弟で何か作戦を…と話をしてみた。

とはいえ、お姉さんとは全く話が噛み合わず、犬猿の仲であることも変わらないことにうんざりしたユタはもう、両親だけでなく、お姉さんにも行き先は告げずに、私と北海道へ行くことに決めたという。