私には故郷という概念がないせいもあり、就職は都内でするつもりでいた。

お互いに内定をもらった頃、

「大事な話があるんだ」

ユタに改まって言われた。

なんとなく、嫌な予感がする。

「ミーナは、東京を離れることは、考えられそうもない?」

何のことかと思ったが、

「父親の会社、都内にも進出してきて…。正直、都内ですら居づらくなってきたんだ」

「そうだったの…」

「だから、実家からなるべく遠く離れたところに移りたいと思ってる。東京以北にまでは、進出することもなさそうだから、なるべく遠くへ…北のほうに行きたい…」