「あのさ、もし嫌でなければ…恋人のふりをしてくれないかな?」

恋人のふり…?

何のことだかよくわからなかった。

「ごめん、突然こんなこと言って。勿論、秋吉に好きな人ができたらすぐにやめるし、それ以前にこんな勝手な頼み…断られて当然とも思ってる」

「どうして恋人のふりをしてほしいの…?」

「言い方は悪いけど、女を寄せ付けたくないんだ」

「あはは…モテる人って、なかなか面白い発想するね…」

そう言うと、栗原くんはなんだか哀しげに私を見た。

「俺はモテる訳じゃないよ…誰も俺の中身なんて知らないから。俺の中身をちゃんと知ってくれるのは、秋吉だけしかいない」

特別に思ってはくれても、本物の恋人にはする気はなくて、ダミーなんだ…。

大事な友達…それ以上でも、それ以下でもないということなのだろう。

だとしても…私はダミーでも栗原くんが望むなら恋人のふりをしてもいい気がした。

いつからだろう…私にとっては、栗原くんのことはただの友達ではない想いが芽生えていたから。