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「どうしたの? フラれたの?」


そんな質問を直球で投げかけてくるのはお母さんしかいなかった。


最近は花壇の世話もしなくなって帰りが早いし、明らかに落ち込んでしまっている私を見ての反応だ。


「フラれてなんてないよ」


私はもごもごと口の中だけで返事をする。


告白もできていないのだからフラれることはない。


あ、だけど佳太くんには彼女がいるかもしれないんだ。


そう思い当たって、また落ち込んでしまう。


私は本当に佳太くんのことを何も知らなかったみたいだ。


名前や学年だって聞いたことがない。


花壇にいた頃にはいつでも会えると思っていたし、そういう質問をすることが無骨なことだと感じられていた。


だけど今になっては後悔するばかりだ。


「どんなことがあっても、お母さんは知奈の味方ですからね!」


お母さんは元気よくそう言って、私の背中を痛いくらいに叩いたのだった。