私は無視して机の中に教科書をしまい始めた。


「ねぇ、聞いてんの? なんたがいるとクラスの雰囲気悪くなるんだけど」


「だよねぇ。だってあんた友達のこと覚えないもんね」


上地さんが声を立てて笑う。


その言葉にさすがに胸がチクリと刺されるような痛みを感じた。


みんな私の病気を知らないし、私自身も隠しているから仕方のないことだ。


これは私が選んだことなんだから。


そう言い聞かせてみても、なかなか胸の痛みは取れない。


「早く特別学級に帰れよバカなんだから」


秋山くんの大声とゲラゲラ笑う声に、体の奥ジワリと黒い感情が浮かんでくるのを感じた。


なにも知らないくせに、特別学級の子たちはもっともっと勉強が進んでいて、あんたたちなんかよりもよっぽど頭がいい子ばかりだ。


そう言ってやりたい気持ちをどうにか押し殺す。


最初は私だってみんなと同じ偏見を持ち、勘違いをしていた。


そう思うと、秋山くんをせめることはできない。


私はただひたすら、ホームルームが始まるまでの時間を耐えていたのだった。