坂下さんと同じ金髪で派手な男子だから、覚えている。


この人は秋山涼平(アキヤマ リョウヘイ)だ。


よく坂下さんたち3人と一緒にいるから、どちらかと付き合っているのだと思う。


秋山くんは右足を前に突き出していて、私は転ばされたのだと気がついた。


「ちょっと」


思わず文句が口をついて出そうになったが、次の瞬間廊下にいた生徒たちにまで笑いの渦が伝染していた。


みんなが私を見て笑っている。


私を見て、手を差し出す生徒は1人もいない。


途端に胸の中に刃を突き立てられたようなひどい痛みを感じた。


少し遅れて羞恥心で自分の顔が熱くなっていくのを感じる。


私はグッと唇を噛み締めて教科書とノートを拾い集めると、逃げるようにその場を後にしたのだった。