「先生! どうして特別じゃない子が一緒に勉強しているんですか!?」


後方からハキハキとした声が聞こえてきた。


振り向くとおかっぱ頭の小柄な女の子が手を上げている。


表情はわからなくても、男子生徒と同じように怒っているのがわかった。


やっぱり私はここにいるべきじゃないんだ。


こんな冷やかしみたいに授業を受けていたら、みんなを怒らせてしまうに決まっている。


「あ、あの先生。私やっぱり教室に戻ります」


今から教室へ入るのはさっきよりももっと勇気がいる。


だけどここの空気を悪くしてしまうのは嫌だった。


「気にしないで矢沢さん。そうだみんな。矢沢さんに自分たちの病気を教えて上げてくれないか?」


途端にそんなことを言い出した先生に私は目を見開いた。


そんなこと、できずはずがない。


今始めて出会ったばかりの私に自分の抱えているものを見せるなんて、そんなこと!


「私は生まれつき視力が弱いの。メガネと、この道具があればどうにか黒板が見えるけどね」


そう言ったのは一番前の、真ん中の席に座る女子生徒だった。


女子生徒の手にはミニサイズの望遠鏡みたいなものが持たれている。


「俺は聴覚。これがないと聞こえない」


金髪の男子生徒が補聴器を取り外して、手に乗せて見せてきた。


金色のストーンで彩られていてとても補聴器には見えない。


さっき大きな声で怒鳴っているように聞こえたのは、自分の声が聞こえにくかったからみたいだ。