とても私には縁遠い2人で仲良くすることはないだろうと思っていた。


私がこの子たちと会話するときがくるとすればそれは……ターゲットにされたとき。


「さっき話しかけたのに、もう忘れてるし」


上地さんの笑い声に胸がギュッと押しつぶされそうになる。


私はA組で何度か失敗してしまったあと、誰にも話しかけられなくなった。


だから覚えることもできなくて、すぐに忘れてしまうようになっていたのだ。


「でも、私は――」


反論しかけたけれど、途中で言葉を切って下唇を噛み締めた。


中学時代、先生と通じて自分の病気を発表してもらったことがある。


先生はとても優しい人で、クラスメートたちに丁寧に失顔症について説明をしてくれた。


これでみんなわかってくれる。


そう思っていたし、実際に説明を聞いた後もみんな普通に接してくれていた。


ただ、困ったときにだけ手を差し伸べてほしかった。


「顔がわからないってどういうこと?」


翌日、教室へ入ろうとした時教室内からそんな声が聞こえてきたので、私は廊下で立ち止まった。


「わかんない。どこを見て相手を判断するんだろ?」


「先生言ってたじゃん。声とか仕草だって」


「でもそんなの変わるかもしれないだろ。男は声変わりするし」


「確かにねぇ」


「あぁ、なんか……めんどくせぇな」