彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない

☆☆☆

私だけ勘違いして恥ずかしい。


佳太くんの特別な女の子になれただなんて、そんなわけなかったんだ。


佳太くんはこの学校の教育実習生で、私を気にかけていたのは自分の株を上げるため。


そりゃそうだよね。


こんな、いじめられっ子で暗い私のことなんて好きになるはずない。


そう思うのに、どうしてか涙が次から次へと流れ出してきて、止めることができない。


突然逃げ出した私を追いかけてきてくれた雪ちゃんは、もう化学の授業を受けている。


私は1人、トイレの個室に入っていた。


しばらくすれば落ち着くと思うけれど、泣き過ぎて呼吸が苦しいくらいだ。


一旦個室から出て窓ち近づき、外の新鮮な空気を吸い込む。


呼吸は落ち着いたけれど、気分は沈んだままだ。


鏡の前に立ってみるとひどい顔の自分がいた。


目は晴れてぼってりして、顔は真っ赤。


まるで赤鬼みたいで少しだけ笑うことができた。


冷たい水で乱暴に顔を洗ったものの、この顔で教室へ戻ることはできない。


昨日の今日で風邪が治っていないことにして早退してしまおうかとも思うが、その考えはすぐに却下された。


家に戻れば昼過ぎにはお母さんが帰ってくる。


そうするとどうしたのかと心配されるに決まっている。


こんなにマヌケな失恋をしただなんて、とても説明できなかった。