☆☆☆

ようやく家に帰った時、時刻は7時を回っていた。


「今日は随分遅かったのね」


玄関まで出迎えてくれたお母さんの声は少し怖い。


花壇から離れられなくなって、お母さんからの連絡でようやく帰ってきたのだ。


「うん、ちょっとね」


曖昧に返事をして視線をそらせる。


あれから霧雨は本降りへと変わっていて、すっかり濡れてしまった。


そんな中ぼーっと突っ立ってアジサイを見ていたものだから、少し頭が痛い。


早くお風呂に入ってあたたまろうと浴室へ向かう途中、体がふらついてお母さんに支えられてしまった。


「ちょっと、熱が出てるじゃない!」


え、熱?


「顔も真っ赤。本当になにしてたのよ」


熱なんて、私――。


そう言おうとしたのに舌がうまく回らない。


急速に上がってきた熱はあっという間に私から体力を奪い取っていく。


そのままお母さんに支えられてベッドに直行することになってしまったのだった。