窓を開けたことで、漏れてきていた音が大音量になる。
大音量のアラーム音だ。

私は窓際のベッドに乗ると、窓枠に両手を掛けて、次に左足を掛ける。
左足に体重を乗せて身体を持ち上げると、隣の家の窓枠に両手を伸ばして掴むと左足を掛けて、体重を左足に移動させるとその勢いのまま窓の先の部屋の中に飛び込んだ。

一五〇センチと小さめの私の身体。
こういう時、身軽で役に立つ。

見事に着地すると、すぐ横のベッドには部屋の住人が気持ち良さそうに眠っている。
耳障りすぎるアラームが鳴り響いているというのに。

ふわふわのカール気味の癖っ毛の黒い髪。
閉じている瞼の下からは長い睫毛。
高い鼻筋。
形の良い唇。
キメの細かい綺麗な肌。

目を閉じていても美形な顔を持っているのが窺える。

私は顔を顰めながら耳障りなアラームを止めると大きく息を吸い込んだ。