瀬夏は朝からとても不機嫌だった

慣れないヒラヒラキラキラした服を着て、髪の毛をセットしていつにもなく女の子らしい格好をしていたからだ

そのおかげで飛んだり跳ねたりできないし、常に服や髪に気を使って生活しなきゃいけない……瀬夏にとっては自分は関係の無い事でクラスで問題が起こり放課後残る事より最悪レベルが高かった

「せっかく可愛いんだからムスッとしないで」

「やっぱりズボンがいい、あと髪の毛もいつもみたいのがいい!」

「顔合わせって大事な事だからいつもの格好じゃダメなのよ」

母が不機嫌な瀬夏を宥めるように言うが依然不機嫌なままだ

母としては既に店の前で相手家族を待っている状態なので機嫌をすぐに直して欲しいがその思いは瀬夏には伝わらない

「あれ?カメラが無い……」

「うそ、お父さん車の中じゃないの?」

「おかしいな…瀬夏、ちょっと車見に行ってくるからここに居てね」

父がそう告げると母と車に向かって歩き出して行く

(お留守番か……)

見るからに高級なレストランの前、もちろん街中で車も目まぐるしく動いている
目の前を通る人もみんな高級感漂う服装をしていて瀬夏は異世界に飛ばされたように感じていた

トントン

瀬夏の背中越しに肩を叩かれる
振り返るとスタイリッシュにスーツを着こなし、柔らかな笑顔をうかべる男性が居た

「ほんと、可愛い姿が台無しだよ〜?」

ゾワッ……

寒気が瀬夏を襲った

(危ない人だ……)

すぐに身を守る体勢に入る、瀬夏の本能的には目の前にいる人物が危ないと判断した
威嚇するように目の前の相手を睨みつける

「怖っ!気づかないかぁ……クソ」

「なんなんですか?」(ガルルルル)

「そんなに睨まないでよ♪」

ケラケラ笑いながら肩を組んでこようとする男性を容赦なく背負い投げた

ドシンっ……

「っぁ……」

「成敗ッ」

人一倍正義感が強い瀬夏はこういうしつこいナンパや必要に接触してくる男性に対してとても冷たい
今回もいつものように投げ飛ばした

少し乱れた髪を耳にかけスカートについた汚れをはらった時、お店の中から綺麗にオシャレしてメイクをした姉が出てきた


「ほーらね、だから一緒に行くって言ったのにー」

「お姉ちゃん!綺麗だよ!」

瀬夏は姉を見るなり笑顔で近づいていき周りをぴょんぴょん跳ねる

「瀬夏も可愛いじゃん♪」