京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。

☆☆☆

そして約束当日。


春菜と純一は嵐山駅の入り口に立ち、春菜はジッと自分のスマホを見つめていた。


何度もロック解除を試みたけれど結局できないままで、誰からの電話も入っていないスマホ。


これだけ誰からも連絡がないなんて、過去の自分にはよほど人望がなかったのかもしれないと、自虐的な笑みが浮かんでくる。


「おまたせしました」


そんな声が聞こえてきて振り向くと、黒田が立っていた。


その顔にはしっかりとした覚えがあり、春菜の心臓がドクンッと跳ねた。


間違いない。


夢の中で見た男はやっぱりこの人だ。


自分はこの人の彼女で、そして振られた。


「行きましょう」


純一に促されて、3人は近くのカフェに向かったのだった。