京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。

「記憶が戻っても、僕は春菜さんにここにいてほしい」


「え?」


その言葉に春菜は純一を見た。


純一の頬はほんのりと赤く染まっている。


「おそらく、一目惚れでした」


春菜を見た純一ははにかんだ笑顔を浮かべている。


春菜は信じられなくて、唖然として純一を見つめた。


「だから、春菜さんが黒田さんのことを思い出した時、正直少しショックでもありました」


純一はずっと自分のことが好きだった?


そんなの、本当に信じられない!


「春菜さんがどんな記憶を取り戻しても、僕はあなたを手放すつもりはない。それでも、いいですか?」


純一の言葉に涙が滲んできた。


これほど嬉しい言葉、もらかったことがあっただろうか。


「もちろんです」


春菜が頷くと純一は微笑み、そしてそっとキスをしたのだった。