京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。

☆☆☆

２人して旅館へ戻ってくると、純一が大慌てで駆け寄ってきた。


その額には汗が滲んでいて息が切れている。


「よかった。どこに行ったのかと思っていました」


「もしかして私を探していたんですか？」


「当然でしょう？　突然どこかへ消えたから驚いたんですよ」


少し怒っているような口調の純一に謝ろうとしたら皐月が一歩前に出た。


「ごめんね、私が連れ出したの」


「またお前か！　人の旅館の従業員を連れ出すなら事前に伝えてからにしろ！」


純一が皐月を睨みつける。


「はいはいわかりました。でも今回は春菜ちゃんから大事な話しがあるみたいよ？」


皐月はそう行って春菜の背中を押した。


皐月は春菜へウインクして見せている。


春菜は小さく頷いて純一へ向き直った。


「話？」


「はい。ごめんなさい私、嘘をついていたことがあります」


そう言うと純一は驚いたように春菜を見つめた。


春菜は順を追って黒田と自分のとの関係を説明した。


「そっか、思い出したことがあったんですね」


春菜の言葉を怒らずに真剣に聞いてくれた純一は顎をさすって険しい表情になった。


「でもどうしてそれを黙っていたんですか？」


必ずそう聞かれると思っていた。